江藤新平といえば「佐賀の乱」と歴史で覚えた人は多いと思います。
中には乱後の処刑写真を真っ先に思い出す人もいるかもしれませんね。
明治の基礎をつくるのに貢献したにも関わらず、西郷隆盛と同じく征韓論で敗れ表舞台を去ったというイメージが大きい江藤新平。今回は、彼の略歴を追う中でその評価も含めて解説していきたいと思います。また彼の子孫を探してみると意外な人物がいることがわかりました！
江藤新平の略歴をわかりやすく解説。
まずは江藤新平の略歴を見てみましょう。
江藤新平は、1834年に肥前佐賀藩の下級藩士、江藤胤光と朝子の間に長男として生まれます。
16才で入学した弘道館では成績優秀でしたが、生活が苦しくなり弘道館を去ってから19歳で枝吉神陽（えだよししんよう：佐賀の吉田松陰と言われた人物）の私塾に学びます。この枝吉が結成した「義祭同盟」で大隈重信や副島種臣、島義勇らと出会うことになります。そして22歳の時に執筆した「図海策」で開国、富国強兵、民生重視の必要性を説きました。
1862年、江藤新平は29歳の時に脱藩し京都に上洛するのですが、2か月ほどで捕らえられ佐賀に強制送還されてしまいます。本来なら死罪のところ、名君と言われた鍋島直正に見込まれ永蟄居ですみます。その5年後、大政奉還で幕府が消滅すると藩政に復帰し新政府軍に参加、戊辰戦争では東征大総督府軍監に任命され江戸で戦後処理にあたります。江戸から「東京」へ改称されたのも江藤の業績です。
その後、文部大輔、左院副議長、創設された司法省の司法卿として、学制、四民平等、警察制度、司法制度の整備など、近代民主主義国家の確立に尽力します。その一方で、私腹を肥やす山形有朋や井上薫らの汚職を暴き辞職へと追い込んだため、同じ長州軍閥の木戸孝允や、大久保利通らの恨みを買い、征韓論に絡んだ政変で西郷隆盛らと共に下野することになりました。
しかし江藤は板垣退助らと「民選議院設立建白書」に署名し武力でなく言論での法治国家を訴える中、佐賀士族の不満が表面化してきます。江藤は征韓党を宥めようとしたものの抑えきれず首魁にすえられ、島義勇も憂国党に与したこともあり、これら両党の4500人の士族が反乱を起こします。いわゆる「佐賀の乱」ですが、大久保ら政府軍により制圧され、江藤は首謀者として梟首という罪を受けることになりました。
1874年4月13日、享年40歳でした。近代司法制度に尽力した江藤に対し「死刑ありき」の暗黒裁判だったのは何とも皮肉な事実です。
江藤新平の評価はどのようなものなのか？
それでは、江藤新平の評価はどのようなものだったのでしょうか。
江藤新平の評価は当時から高く、明治維新において活躍した「維新の十傑」の一人に選ばれています。この十人は新政府の中心人物であると同時に、新政府をリードする各藩の代表人物でもありました。同時期に活躍した佐賀藩出身の偉人を選んだ「佐賀の七賢人」としても評価されています。しかしその後、「佐賀の乱」の首謀者として斬首されたためか、江藤は功績に対し評価は低いままでした。
しかし、明治政府における司法制度確立の面から見ると、江藤新平が残した功績がわかります。近代国家を目指し、司法の独立を主張、裁判所や検察機関の創設、民法の編纂に尽力した彼は「近代司法制度の父」と呼ばれています。この他にも警察制度や学制の創設にも関与しており、その功績が伺えます。
また、江藤は「四民平等」を打ち出し、日本史の中で初めて国民の人権を認めた人物でもあります。司法制度はこれらの人権を保障するために整えられたのです。この他にも江藤は役人の汚職に厳しく、山県有朋や井上馨が関わったとされる疑惑を徹底的に追求した事でも評価されています。高潔で正義感が強い人物だったのでしょう。
※参照：山県有朋の人物像について解説。妻や子孫の存在も気になる！
江藤新平の子供や子孫はいるの？
それでは、江藤新平には子供や子孫に当たる方はいるのでしょうか。
まず、江藤新平には熊太郎と江藤新作という子供がいました。このうち長男の熊太郎は23歳でなくなったため、その後を継いだのは次男の江藤新作になります。新作は後に衆議院議員となり犬養毅の側近として活躍した他、父の遺稿を編纂し『南白遺稿』を刊行しています。また、新作の子供である江藤夏雄も衆議院議員になりました。
この江藤夏雄の子供が、1969年の建国記念日に国会義指導前で自決した江藤小三郎です。この事件は、その翌年に割腹自殺をした三島由紀夫に影響を与えたとも言われています。また、新作の長男である冬雄の子供で、江藤新平のひ孫にあたる江藤兵部さんは、90年代に航空総隊司令官を努めていた事でも知られています。
江藤兵部さんは2012年に行われた「江藤新平卿銅像まつり」で謝辞を送った際、ご自分の二人の娘さんが法曹家になった事を述べた事でも話題になりました。自分の子孫が司法の道を歩んだという事を聞けば、江藤新平も大いに喜ぶ事でしょうね。
この記事のまとめ
以上、江藤新平の略歴や評価について見直してきました。
彼の子孫の活躍や、三島事件が繋がっていたことは驚きでしたね。
こうしてみると明治政府の中で突出して近代的であった江藤新平の思考と行動力が、大久保利通に憎まれた理由の一つだったのだと思います。もし彼が佐賀の乱で処刑されなければ、明治以後の日本の歩みはまた違ったことになっていたのではないでしょうか。
なお、以下の記事では三島由紀夫の年表や代表作について解説しているので、興味があれば一度ご覧になってみて下さいね。
※参照：三島由紀夫ってどんな人？年表や代表作をわかりやすく解説！
