日本史の教科書には、様々な種類の絵画が登場します。
大和絵、唐絵、似絵、浮世絵、錦絵…どれも同じようで分かりにくいですよね。
この5つの違いは一体何なのでしょうか。
今回は、大和絵、唐絵、似絵、浮世絵、錦絵の違いをわかりやすくまとめてみました。
目次
大和絵とは?時代によって意味が違う?
大和絵とは、以下で解説する唐絵に対する絵画のスタイルで、主に日本風の作品のものを指す言葉です。10世紀の初め頃に誕生した国風文化の際に誕生し、その代表作としてはは12世紀に作られた「源氏物語絵巻」といった絵巻物が知られています。
※参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/大和絵
その後、時代が経過して14世紀になると、大和絵とは「平安時代に確立した伝統的な絵画」を意味するようになりました。また大和絵は室町時代に活躍した土佐派や、江戸時代に活躍した狩野派といった流派を通して、明治時代以降の日本画にも大きな影響を与えています。
唐絵とは?水墨画に影響を与えた?
唐絵とは、中国(唐)風の絵画を指します。日本の絵を意味する大和絵の対義語で、中国人の手によって描かれた作品もあれば、日本人が描いた中国風の絵を意味する事もあります。
また、中国の王朝は「唐」から「宋」「元」へと変わっていくのですが、こうした王朝の時代に描かれた「宋元画」という絵画の事を、鎌倉時代後半の日本では「唐絵」と呼ぶようになりました。こうした宋元画と呼ばれるジャンルは、室町時代以降に書かれるようになった水墨画に大きな影響を及ぼした事で知られています。
似絵とは?肖像画が描かれなかった理由について!
似絵とは鎌倉時代に成立した大和絵の1ジャンルで、人物の肖像画の事を指します。平安時代の中頃までは、当時の皇族や貴族は呪われる事を恐れて、自分の姿を絵にしたがらない傾向があったのですが、平安末期に現れた藤原隆信の影響もあって、次第に自分の肖像画を作らせる人々が増えていきました。
こちらの後鳥羽天皇像は、隆信の息子で似絵を確立した藤原信実が描いた作品です。
※参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/似絵
信実の死後、似絵の技術はその子孫が受け継ぎました。しかし、似絵を描くノウハウが社会に流出していき、この絵を多くの人が描けるようになった室町時代になると、「似絵」というジャンルの絵が描かれる事はなくなりました。
浮世絵とは?実は色々なジャンルがあった!
浮世絵は江戸時代に生まれた、庶民の生活や風俗などを描いた日本画の1ジャンルです。浮世絵の「浮世」とは、江戸時代で”現世”を意味する言葉で、女性を描いた美人画や歌舞伎役者を描いた役者絵、花や鳥を描いた花鳥画や日本各地の名所を描いた名所絵、中にはヱロ本である春画など、幅広いジャンルが存在するのが特徴です。
※参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/浮世絵
こちらはの画像は、「浮世絵の祖」と呼ばれる菱川師宣(ひしかわもろのぶ)が描いた「見返り美人図」です。
こうした幅広いジャンルの中で、浮世絵は出版された本の挿絵、上記の「見返り美人図」に代表される肉筆浮世絵、そして『富嶽三十六景』や『東海道五十三次』に代表作される木版画の3つのジャンルに大きく分類できます。このうち2つ目の肉筆浮世絵は、繊細な線と緻密な作画を特徴としており、この点は浮世絵が大和絵の流れを汲んでいる証だと言われる事もあります。
錦絵とは?有名な作品も含まれてる!?
最後に、錦絵についても見ていきましょう。
錦絵とは、浮世絵のジャンルの1つである木版画の中で、様々な色が使われている作品を指します。江戸時代初期の木版画は、まだ黒一色で刷った絵に筆で色をつけていく単色刷りが主流でした。これが江戸時代の中ごろの18世紀後半になると多色刷りの技術が開発され、美人画や役者絵も多色刷りが採用されるようになります。こうした作品が「錦絵」と呼ばれています。
※参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/富嶽三十六景
錦絵の代表作には、上の葛飾北斎の『富嶽三十六景』や安藤広重の『東海道五十三次』といった、日本史の教科書の中には必ず登場する作品も含まれています。今日私たちが「浮世絵」と呼んでいる絵画の中には、実は「錦絵」でもある作品も珍しくありません。
この記事のまとめ
以上、大和絵、唐絵、似絵、浮世絵、錦絵の違いについて解説してきました。
それぞれの内容を簡単にまとめると、以下のようになります。
・中国風の絵画を指すのが唐絵
・唐絵に対して、日本風の絵画を指すのが大和絵
・大和絵の中で、人物の肖像画を描いたのが似絵
・江戸時代に登場した、庶民の生活を描いた絵画が浮世絵
・浮世絵の中で、様々な色が使われている木版画が錦絵
こうした違いを抑えれば、日本画についてもかなり詳しくなるのではないでしょうか。歴史の教科書や美術館でこうした絵画を見る機会があれば、一体どのジャンルの作品なのか考えてみると面白いかもしれませんね。