大久保長安という武将をご存知ですか？
徳川家康に使えた優秀な官僚で、日本各地の主要都市の内政を手がけた事で知られる人物です。行政官僚として非常に優秀で、その影響力から「天下の総代官」と称されました。
このページでは、そんな大久保長安が関わった土地から、八王子、石見銀山、佐渡金山の３つを選んで、長安との関係を探ってみました。
大久保長安と八王子の関わり。「八王子同心」とは？
大久保長安と八王子との関係は、徳川家康の関東移封の時期までさかのぼります。1591年、長安は家康から八王子に領地を与えられる事となり、以後、この地の内政を担当する事となります。事績としては、「石見土手」と呼ばれる土手を築くといった治水事業を行ったり、宿場町の建設を推し進めたといった記憶が残っています。石高は8000石だったものの、実質的には、かつてこの地を治めていた北条氏照（北条氏政の次弟で、北条氏の有力一門の1人）が治めていた9万石を任されていたと言われています。長安の内政面における能力に対する、家康の信頼を示すエピソードだと感じますね。
長安と八王子との関係で最も有名なのは、「八王子千人同心」と呼ばれる国境警備を担当する組織の運営に携わった事でしょう。この組織の構成員は、長安と同じ旧武田家の人々で占められており、甲斐方面からの侵略に備えるために創設されたといった背景がありました。当初、500人余りから成っていた八王子同心ですが、1599年には家康から人員を倍にする事が認められており、この時はじめて「八王子千人同心」と呼ばれる事になった、といった背景があります。
この八王子千人同心ですが、長安の死後、生前の行いが断罪された後も存続しています。江戸中期には萩原重秀などの幕臣を、また幕末には新選組のメンバーを輩出した事でも知られています。また、武田信玄の娘である松姫は、この八王子千人同心の人々の象徴であったと言われており、大久保長安が松姫のために住まいを設けたという記録も残されています。
※参考：武田信玄の娘について。黄梅院、見性院、真竜院、菊姫、松姫の生涯とは？
「石見守」大久保長安と石見銀山の関わりとは。
大久保長安と石見銀山との関係は、関ヶ原の戦いで東軍が勝利した事にさかのぼります。戦いに勝利した家康は、石見銀山を領有するために、長安を石見に派遣。この地を幕府の直轄領とする事に成功します。
翌年の1601年、長安は初代の銀山奉行としてこの地の管理を任される事となります。そして、この鉱山の経営者であった安原伝兵衛らと共に銀山の開発を推し進め、家康に莫大な量の銀を提供する事に成功します。この時期の石見銀山での銀の産出量は莫大なものであったとされ、これらの一部は江戸幕府が推進する朱印船貿易の元手となりました。
長安はその後、全国各地の奉行を兼任する事となり、その権勢から「天下の総代官」と呼ばれる事となりました。1603年、家康が征夷大将軍に任じられると、長安も石見守を名乗る事を許されています。彼が自分の任地へ赴く事はほとんど無かったそうですが、石見には合計６度も訪れたと言われており、長安がこの地を重視していた事がわかります。
大久保長安と佐渡金山。長安ゆかりの建物とは？
「天下の総代官」と言われた大久保長安。彼が管轄していた国は伊豆、甲斐、信濃、美濃、越後と幅広い地域に及びます。この中でも、石見銀山と共に大久保長安が管理していた地として有名なのが、ここでで解説している佐渡金山です。
長安は1600年11月、佐渡金山接収役として、この金山を江戸幕府が領有する事に大きな役割を果たしています。1601年に、この土地にある金北山（きんぽくさん）という場所で金鉱が発見された事もあり、1603年に長安は佐渡奉行としてこの金山の開発を推し進める事となります。
石見銀山と同様、佐渡奉行所から輩出される富は莫大なものでした。ここから輩出される金銀は幕府の財政を大いに支え、金山の近隣の町々は大いに栄えました。江戸時代初期には、1年間に400キログラム以上の金が産出されており、その量は世界No.1だったと言われています。
1606年に大安寺を建立。自らの墓である「逆修塔」を建てた他、佐渡金山の開発に携わった墓も整えています。
また、長安といえば父や祖父が猿楽師（猿楽：現代の能のこと）であった事が知られてますが、家系の影響からか、こうした猿楽師たちを引き連れて佐渡へ赴いたという記録が残っています。また、1605年は長安は春日神社を佐渡に建てているのですが、彼の死後、この神社には能の舞台が建設され、同地でこの芸能が行われる事となりました。
※参考：能、猿楽、狂言、文楽、歌舞伎の違いをわかりやすく解説！
まとめ
大久保長安のゆかりの土地というテーマで、八王子、石見銀山、佐渡金山と彼の関わりについてご紹介しました。
江戸幕府初期に活躍した行政官僚として、優れた事績を残した長安。しかし没後、横領をした罪を咎められ彼の家系は断絶。その功績の全体像もいまだ不明な点が多いとされています。今後、研究が進むにつれ、長安の業績が明らかになって欲しいですね。
