『枕草子』と言えば、「春はあけぼの…」の書き出しで有名な平安時代の随筆です。
ただ、どんな内容だったのかと言うと、答えられない方もいるかもしれません。
そこでこのページでは、枕草子の内容や作品としての特徴、そして作者の清少納言がどんな人だったのかを、中学生の方向けに解説します。
『枕草子』の内容を中学生向けに解説!
まずは『枕草子』の内容を、中学生の方向けに解説します。
『枕草子』は平安時代の中ごろに書かれた随筆集です。「随筆」は今でいうところのエッセイ。身の回りで起きた出来事や、見聞きしたニュースなどについて自分の感想を書いたものです。
作者の清少納言は一条天皇の妃・藤原定子(ふじわらのていし)に仕えていて、華やかな宮中での生活での体験や出会った人々についての感想を『枕草子』に綴っており、段数(話のネタの数)は約300に及びます。内容から考えると、995年ごろには一部ができあがり、1001年ごろまでには完成していたと思われます。
書き出しの「春は曙(あけぼの)。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くなびきたる(春は夜がちょっとずつ明けていくころがいい。山と空の境目がしだいに白くなっていき、少し明るくなったところに、紫がかった雲が細くなびいているのがいい感じ)」というフレーズはとても有名です。古文や歴史の授業でもよく出て来るので、既に習ったかもしれませんね。
中学生でも分かる!『枕草子』の特徴とは?
それではこの『枕草子』とは、一体どのような特徴がある作品なのでしょうか。
枕草子を語る上で絶対に外せない言葉に「をかし」「いとをかし」という言葉があります。
「をかし」とは古文では「趣がある、滑稽だ、魅力的だ」など、さまざまな意味がありますが、感情のままに「イイね! おもしろいね!」ではなく、客観的・理知的に「これはこういう理由で、こういう点がおもしろいね」と評価するニュアンスが含まれています。
平安時代では「趣がある、風情がある」という意味で使われることが一般的です。
清少納言が「をかし」をたくさん使ったという事は、彼女がものごとを客観的にとらえて文章を書こうとした証拠だとも言われています。『枕草子』で「をかし」が使われている文章を挙げておきます。
「ただ一つ二つ など、ほのかにうち光りて行くも、をかし」
こちらを現代語訳したものがこちら。
「(蛍が)ほんの一匹二匹など、
ぼんやり光って飛んで行くのもいいものですね」
また、『枕草子』に書かれている内容は大きく3つにわけることができます。
・自然や人物について、清少納言の感性で鋭くツッコミを入れたもの。
・藤原定子との宮中生活の思い出を回想したもの。基本的に定子を誉めている。
・季節ごとの自然や人間関係について、自由に思いを巡らせて書き留めたもの。
今で言えば、有名な作家さんがブログを書いてるようなものかもしれません。
『枕草子』の作者、清少納言ってどんな人?
『枕草子』の内容から、「頭がよくて理知的な女性」といった清少納言のイメージが浮かび上がってくる方もいるかもしれません。実際はどんな人だったのでしょうか?
清少納言の簡単なプロフィールを見てみましょう。
この清少納言という女性ですが、実は本名も、生まれた年も亡くなった年もよくわかっていません。父は清原元輔(きよはらのもとすけ)という有名な歌人で、村上天皇に仕えた人です。清原家は代々和歌の名門として知られていました。その後、橘則光(たちばなののりみつ)という貴族と結婚しましたが離縁し、993年ごろから藤原定子に仕えるようになります。
歌人の家系に生まれただけあって和歌はもちろん、漢文にも詳しかった彼女。定子から信頼されただけでなく、藤原公任(ふじわらのきんとう、和歌で有名)や藤原行成(ふじわらのゆきなり、書道で有名)といった一流の文化人たちとも交流しました。この時代の交流というと、歌や手紙の贈りあいですね。手紙や歌で軽い気持ちで相手を誘惑してみたり…それをうまく言い交して断ったり…といった“遊び”をするには、それなりの教養が必要だったのです。
定子には約10年仕えましたが、1000年に定子が出産時に亡くなると宮中を去っています。その後、20歳ほど年上の藤原棟世(ふじわらのむねよ)と再婚し、棟世が赴任していた摂津国(現在の大阪府・兵庫県にまたがる地域)に身を寄せていたようです。晩年は出家して孤独な生活を送ったといわれています。
この記事のまとめ
このページでは枕草子の内容やその特徴、そして作者の清少納言がどんな人だったのかを、中学生の方向けに解説しました。
『枕草子』は現代風にいえばエッセイ集です。清少納言は頭がよくて切り口鋭いエッセイストといったところでしょうか。「これはステキ!」「これはイケてない」ということがたくさん書かれているため、「エッセイというより、むしろブログだ」という声もあります。そう思うと、一気に身近なものに感じられますね。
なお、以下の記事では『枕草子』とよく比較される『源氏物語』について解説しているので、興味があれば一度ご覧になってみて下さいね。
※参照:源氏物語のあらすじを中学生向けに解説。作者の紫式部とは?
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