鎌倉時代の文学の中で、『徒然草』と並んで有名な作品に『方丈記』があります。

ただし、この作品の名前は知ってる方でも、その内容や特徴まではよく分かっていない・・・というケースもあるかもしれません。そこで今回は、『方丈記』の内容や特徴に加え、作者の鴨長明がどんな人だったのかもご紹介します。
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『方丈記』の内容についてわかりやすく解説!


まずは『方丈記』の内容を、簡単に見ていきましょう。

『方丈記』は1212年ごろに完成した随筆集です。主に平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての出来事が書かれており、また清少納言の『枕草子』、吉田兼好(兼好法師)の『徒然草』を合わせて、日本三大随筆と呼ばれるほど優れた作品として当時から知られていました。


冒頭部分の以下のフレーズがとても有名ですね。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にはあらず
流れる川の流れは絶えることなく、しかも以前のままの水ではない


この文章を暗記した、といった経験のある方もいると思います。


肝心の内容ですが、大きく2つに分かれています。


まずは前半について。

・安元の大火(1177年)
・治承の辻風(辻風=竜巻、1180年)
・平清盛による福原遷都による都の混乱(1180年)
・養和の大飢饉(1181-82年)
・元歴の大地震(1185年)


こうした自分が経験した災難の様子を回想し、世の無常を嘆くものになっています。


一方の後半部分は、50歳ごろで出家した後の生活について記されています。長明は出家後、京の都の郊外にある日野山(京都市伏見区と宇治市の境)に庵をつくって移り住みました。

『方丈記』という名前の由来は、この住まいの広さが方丈(一丈四方、一丈は約3m)だったことから、鴨長明はこの作品を『方丈記』と名付けたと言われています。

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『方丈記』の特徴は「無常観」にある!


それでは、『方丈記』の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。

『方丈記』のベースには一貫して「無常観」があります。
「無常」とは「すべてのものは生まれては滅び、変化する」という仏教用語です。

長明が生きた平安末期から鎌倉時代初期は、貴族中心の世の中から武士の世の中へと移りゆく激動の時代でした。また、当時は飢饉や地震も多く、苦しみから逃れたい人が増えた時代もあります。こうした世相の中、「釈迦が説いた正しい教えに基づいて悟りを開く人がいず、世が乱れる“末法”の時代が来る」という末法思想がブームになっており、これに答える為に新しいカタチの仏教が次々と誕生していった時代でもあります。

そんな中で長明は「そうした世の中では何ひとつ安定したものはなく、すべてのものは移りゆく。そのなかでいかに生きればよいか」ということ考えて、これテーマにして『方丈記』を書いたのです。

『方丈記』が完成した1212年ごろは、長明の最晩年に当たります。
快適な山の中の暮らしに愛着を抱く様子を記しつつ、『方丈記』の最後の文章では、それすらも罪だと書いて筆を置いています。

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『方丈記』の作者・鴨長明とはどんな人だったのか?


最後に、作者の鴨長明がどんな人だったのかについてもご紹介します。

鴨長明は1155年ごろに、京都・下鴨神社の禰宜(ねぎ。神官の位の1つ)である鴨長継の次男として生まれたと言われています。当時の下鴨神社は朝廷から重んじられた特別な神社。そのまま成長すれば、長明も神官になったはずでした。

しかし、18歳で父を亡くすと、禰宜の職は父の又いとこに当たる人物に移ってしまい、鴨長明は禰宜になることができなくなってしまいます。以降、長明は歌人として活躍し、1201年、後鳥羽上皇の時代に和歌どころの寄人(よりうど。和歌の選定などをする役職)を命じられました。

1204年、河合神社(下鴨神社境内にある摂社)の神官に欠員が出たので長明は就任を希望しましたが、下鴨神社の禰宜からの反対に遭い、神職に就くことができませんでした。出世という意味では「負け組」になってしまった長明は、この年に出家してしまいます。その後、1216年になくなるまで日野山で隠遁生活を送り、『方丈記』を書き上げたのです。

この記事のまとめ


方丈記の内容や特徴、そして作者の鴨長明がどんな人だったのかを交えてご紹介しました。

頻発する災害、不安定な世の中。その中にあって、うまくいかない人生。現代を生きる私たちと重なるところが多いのではないでしょうか? 『方丈記』は平安末期に起きた災害について事細かに記述されていることから、歴史資料としても高い評価を受けています。

この作品の文章量は、文庫本にしてわずか15ページほどしかありません。現代語訳なら、1時間もあれば読み切ってしまうでしょう。現代語訳からでも一度読んでみてはいかがでしょうか?

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