%e8%b2%bc%e3%82%8a%e4%bb%98%e3%81%91%e3%81%9f%e7%94%bb%e5%83%8f_2016_11_27_16_43 歴史小説を好む方でも、平安時代を避ける方は多いです。
それはおそらく、雅な風流さをイメージされている方が多いからということもあります。

しかし、平安時代には、絢爛豪華な雅さとは違う、激動の時代という一面もあるのです。
そのため、日本の多くの著名な作家たちが、魅了されてきた時代でもあるのです。

そして、そんな彼らの小説を読むことで、決して一面だけでは描けない、平安時代の歴史を知っていただけるかもしれません。

そこで今回は、歴史小説家たちが描く平安時代のおすすめの歴史小説を5冊ご紹介します。

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平安時代にまつわるおすすめの歴史小説(1)空海の風景


著者・司馬遼太郎(しばりょうたろう) 

司馬遼太郎は、言わずと知れた日本を代表する歴史小説家です。
歴史小説としては、特に戦国、幕末、明治時代の作品を多く残しています。それらの時代を題材とした作品をご存知の方は多いでしょう。
しかし、そんな司馬遼太郎も、平安時代を舞台とした小説を書いているのです。
それが、この「空海の風景」。

本作は、表題の通り、空海こと、後の弘法大師が主人公です。
空海は、平安時代の初期の人物であり、真言宗の開祖です。中国から真言密教を日本にもたらし、旧来の奈良仏教から平安仏教へ移り変わる流れを作った先駆者の一人です。彼の生きた時代は、未だ国としては混迷していた時代であり、人も社会も未熟な発展途上にありました。

本作は、そんな時代に生まれた空海の幼い頃から、亡くなるまでのその生涯を描いています。

しかし、空海が生きた時代というのは、あまりに古く、詳しい文献などが残っていません。
そのため、残っている文献と、平安時代というその時代背景を融合させて司馬遼太郎自身が空想し、執筆した歴史小説ということで、表題も「空海」ではなく、「空海の風景」とつけられたそうです。

元記者という司馬遼太郎は、独自の論評を含めた独特の文体で小説を書くことでも有名です。そして、この作品は特にその色が濃く、また、本作品内でも空海のことを天才だと称しているだけあって、その人物像へ迫るところなどは、とても深く掘り下げられています。しかしそれは、数少なく残る文献を研究し、平安時代というその時代背景などを緻密に想像して、舞台となるほどにまで構築していったからこそ描き出せたものといえるでしょう。

客観的でありながら、主人公を主軸として展開していく物語に、思わず引き込まれていきます。

平安時代にまつわるおすすめの歴史小説(2)はなとゆめ


著者・冲方丁(うぶかたとう)

著者の冲方丁は、小説家であり、脚本家でもあります。
アニメやゲームの脚本やSF作家としてご存知の方も多いかもしれませんが、歴史小説家としても定評のある作家です。

そんな冲方丁が描く、平安時代を舞台とした歴史小説「はなとゆめ」。
主人公は、あの枕草子の作者でもある清少納言です。

本作は、清少納言が枕草子を書き上げるまでの生涯を描いた物語。
清少納言の視点を主軸として、自らが仕える中宮・定子への一途な敬愛の心と、時の権力争いに巻き込まれていくその運命が、美しく情緒豊かに描かれています。

登場するのは、平安時代を代表する歴史上の人物ばかり。しかし、どの登場人物にも感情や思考があり、読み進めるごとに、知識として知っていた歴史上の人物という無機質なものから、生きた人間だと実感させてくれます。

そこまで歴史小説が得意でない人でも、また、歴史の知識などが無くても、一つの物語として読むことができる作品になっているので、清少納言が生きた平安時代を分かりやすく理解することができる作品でもあります。

※参照:枕草子の内容や特徴を中学生向けに解説。作者の清少納言とは?

平安時代にまつわるおすすめの歴史小説(3)絶海にあらず


著者・北方謙三(きたかたけんぞう)

北方謙三は、日本の小説家です。ハードボイルド小説を書く作家としてご存知の方も多いと思います。しかしながら、歴史小説家としても、その名は広く知られています。

そんな北方謙三が書いた平安時代を舞台とした歴史小説が、「絶海にあらず」。
これは、歴史上の「承平天慶の乱(じょうへいてんぎょうのらん)」がベースになっている作品です。「承平天慶の乱」とは、関東で起きた「平将門の乱」と、瀬戸内海で起きた「藤原純友の乱」の二つを総称したものです。

そして、本作では、この「藤原純友の乱」が主軸になっています。勿論、主人公は藤原純友
藤原純友は、世の権力者である藤原一族の中でも、特に栄えた藤原北家出身という人物です。しかし、早くに父を亡くしたことから後ろ盾もなく、中央での出世街道からは外れてしまい、地方官となります。そこで藤原純友は、海賊を捕縛する側として任に就きますが、任期終了後も、帰郷することはありませんでした。そればかりではなく、驚くことに瀬戸内海全域を支配する海賊の統領となり、果ては大宰府へと襲撃を掛けることになるのです。

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そんな藤原純友の激動の生涯を描いた本作。

著者が北方謙三ということで、主人公の藤原純友は、まさにハードボイルドと称して良いほど魅力的に描かれています。さらに、本来は名家の出である藤原純友が、なぜ朝廷へと牙をむくこととなったのか。その理由となる当時の不条理な世情が、細やかに描かれています。

そのため、歴史上としての人物たちが、感情を持つ人間として生き抜く様を感じることができる作品になっています。

平安時代にまつわるおすすめの歴史小説(4)新・平家物語


著者・吉川英治(よしかわえいじ) 

吉川英治と言えば、歴史小説を読む方であれば、その名を知らない人はいないほど著名な歴史小説家です。
歴史小説を書いている著名な作家の殆どが、彼の名を冠した賞を受賞していることを見れば、どれほどこの作家が歴史小説家として名を馳せていたかが知れることでしょう。

そんな吉川英治が書いた代表作の一つでもある「新・平家物語」。
この作品は、表題にもある「平家物語」は勿論のこと、基礎史料でもある「玉葉」、「保元物語」や「平治物語」「義経紀」などの古典軍記を基礎軸とした小説となっています。

しかし、物語はそれだけで終わることなく、平家一族が生きた平安時代から、その幕切れとなる鎌倉時代に移り至るまでを、広い視野で描き切った大作です。

物語は、後に栄華を極めた平清盛の幼少時代から始まります。けれど、物語は主人公一人だけにクローズアップされるのではなく、その時代の世の無常さや、人の愛憎、その他の登場人物の心情に至るまでが丁寧に描かれているのです。おかげで、平家の滅亡時には、ある種の虚無感を抱くほどです。

そして、物語は平家だけでなく、その宿敵、源氏一族にまで及びます。
不遇の幼少時代を過ごした源頼朝と、弟の義経。この二人の成長、そして決別が、互いの心情を交え、情緒豊かに描かれているのです。

平安時代という一つの時代が終わり、鎌倉時代に至る黎明期。
この歴史の変革ともいえる激動の瞬間が綴られた本作。

読了後には、歴史の荒波を泳ぎ終えた小気味よい疲労感を得ることでしょう。

平安時代にまつわるおすすめの歴史小説(5)源頼朝


著者・山岡荘八(やまおかそうはち)

山岡荘八は、日本を代表する歴史小説家です。彼の残した作品の数多くが、映画や大河ドラマ、コミックになっています。特に代表作「徳川家康」は、全二十六巻という膨大なシリーズ数でありながら、一大ブームを巻き起こしました。

そんな山岡荘八が書いた「源頼朝」。
おそらく日本人であれば、その名を知らない歴史上の人物が主人公です。源頼朝は、平安時代という一つの時代が終わる瞬間に立ち合い、次代の鎌倉時代の基礎を築いた人物でもあります。

そして本作は、その源頼朝が十三歳の頃より始まります。その当時、平家との争いに父・義朝が討たれ、源頼朝自身もまた、命は助かるものの伊豆国へと流されることになります。伊豆に辿り着いた源頼朝は、その地でこの世が現状、どういうものなのかを、出会う人々や環境によって経験し、学んでいきます。そして、源頼朝は、その心に己が信念を抱き成長していきます。

歴史の動きに沿いながらも、源頼朝がどうしてそういう動きを見せたのか。
それが、源頼朝の心情を深く掘り下げながら描かれていきます。

そればかりでなく、時代の移ろいや出来事、人々の抱える思惑、感情を巧みに表現することで、より源頼朝という人物の存在感を見せつけるという展開の広げ方は、山岡荘八だからこその描き方と言えるでしょう。

歴史の変革という激動の瞬間に生きた源頼朝。
そんな時代であっても、最初から最後までぶれることなく、己の抱いた信念を貫く主人公の生き様に、読めば読むほど惹き付けられていく作品です。

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この記事のまとめ


平安時代を題材にしたおすすめの歴史小説を5冊ご紹介しました。

歴史小説の醍醐味としては、前提としての時代背景があるからこそ、登場人物たちの思いや存在が鮮明になっていくということです。そして、その信念ともいえる感情や心情が、後の歴史を作っていくことになっているというのは、なんとも浪漫を感じさせます。

歴史を知り、さらに空想して、そこに生きる人間を理解したからこそ描ける歴史小説の世界。
以下の記事では幕末に関する歴史小説のおすすめもご紹介しているので、興味があれば一度ご覧になってみて下さいね。

※参照:幕末を題材にしたおすすめの歴史小説を5冊解説!